離婚用語解説

離婚とお金

離婚と子供

離婚と家

 

〇慰謝料

慰謝料とは,相手方の行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償のことをいいます。相手方が,暴力を振るったり,浮気をしたような場合に認められますが,裁判上、定型化されており、性格が合わないとか親族との不和といったことだけでは,慰謝料請求は認められません。

不貞行為(浮気)が原因となって,婚姻関係が破綻した場合,夫(妻)への慰謝料だけでなく,浮気相手に対しても慰謝料を請求することができます。ただし,夫(妻)と浮気相手との間に性的関係があったことを証明する必要があります。ご飯を食べに行っただけとか,手を繋いだだけの場合には,不貞行為として認められません。もっとも、その親密さの程度如何によっては、一定の慰謝料が認められたケースもあります。

離婚の慰謝料の相場ですが,財産分与同様,1000万円以上の高額な慰謝料が認められることは,ほとんどありません。婚姻期間、子の有無及び不貞期間等諸事情を考慮して算定されますが、200万円~300万円程度が多いのが実情です。

慰謝料を請求するためには,証拠の存在が重要です。暴力をふるわれた場合には,怪我の写真,診断書やその際に録音した音声など,不貞行為の場合には,浮気相手とやりとりしたメールやSNSの写真,興信所による浮気調査といったものが証拠として有用です。

離婚慰謝料の請求権も,期間制限があります。この請求権は離婚から3年間で時効によって消滅してしまいますので,気をつけましょう。

〇財産分与

財産分与とは,結婚期間中に夫婦が協力して築いた財産を,離婚にあたって清算して分配することをいいます。

夫婦が共同生活をしている間,協力して一定の財産を形成しますが,それは多くの場合,夫名義の財産として形成されることが多くあります。しかし,夫名義の財産とされるものでも,その実質が妻の協力貢献によって形成維持されたものについては,離婚の際に,貢献の割合に応じて清算されることになります。たとえば,結婚後,土地と家を買った場合,名義が夫となっていても,妻との共同生活中に貯めたお金で買ったものであれば,夫婦の共有財産として,財産分与の対象となります。妻が職業を持っていた場合も,持っていなかった場合も同様です。離婚の原因を作った側からも請求できます。

財産分与は、夫婦の共有財産を確定し、財産形成にあたって一方の特殊な専門的能力が大きく寄与した場合は別ですが、分与の割合は1/2とされるのが一般的です。

現実の財産分与の支払いは,慰謝料と合算する場合も多く,調停や裁判においては,各家庭の実情に合わせた額が個別的に判断されます。

これから離婚を考える場合には,相手方の財産状況を出来る限り詳細に把握しておくことが重要になります。相手方が家計を握っている場合には,離婚の話を出す前に,通帳の残高,生命保険,保有株式等の金融資産や車,バイクなど所有資産をしっかり把握して,それらの現況をコピーしたり写真に残すなどして,後々証拠として使えるように残しておきましょう。

財産分与を請求できる期間は,離婚から2年以内に限られます。2年を過ぎると時効となり,請求ができなくなりますので,気をつけましょう。

〇養育費

養育費とは,子どもが成人するまで負担されるべき扶養料のことをいいます。

協議離婚の場合には,お互いの合意で自由に養育費を決められます。調停離婚,審判離婚や裁判離婚の場合には,東京・大阪の裁判官の研究により作成された「算定表」というものを基準に,養育費が決定されます。「算定表」は,裁判所のホームページで見ることが出来ます。

一つ例を挙げますと,サラリーマンの夫の年収が500万円,パートの妻の年収が100万円で,10歳の子供が1人いる場合で,妻が子供を引き取る場合には,算定表によると月額4~6万円を基準として養育費が決定されることになります。

養育費が支払われるのは,子どもが成人する(20歳になる)までというのが一般的ですが,高校卒業後働く場合には18歳までとか,両親ともに大学卒で子どもにも大学進学を望んでいる状況がある場合などは大学を卒業する22歳までといった微調整をすることも可能です。子供が私立学校に進学することについて合意できている場合には,その費用を加算してもらうことも可能です。

支払途中で,子供の病気や再婚など予想外の事態が起こった場合には,増・減額の請求も可能です。

〇婚姻費用(生活費)分担請求

婚姻費用とは,婚姻中の日常の生活費のことで,具体的には衣食住の費用,医療費,子どもの教育費,養育費等が含まれます。夫婦には,お互いの生活レベルが同等になるように助け合う「生活保持義務」があり,婚姻から生ずる費用を,収入その他の一切の事情を考慮して,分担する義務があります。ですので,離婚前に別居している場合や同居していても生活費を渡してくれない場合には,その期間中の婚姻費用について,家計を支えている(収入の多い)方に,婚姻費用の分担を請求することができます。

この婚姻費用の分担の額についても,「算定表」がありますので,その「算定表」をもとに,諸事情を考慮して,支払額を決めます。

一つ例を挙げますと,サラリーマンの夫の年収が500万円,パートの妻の年収が100万円で,10歳の子供が1人いる場合で,妻が子供を引き取って別居している場合には,算定表によると月額8~10万円を基準として婚姻費用の分担額が決定され,その額を夫が妻に支払うことになります。

参考:婚姻費用分担請求調停

〇年金分割

年金分割とは,婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割する制度のことです。簡単に言うと,厚生年金の一部を,妻が自分名義で受給できるようにする手続きのことです。

年金分割の制度には,合意で按分割合を定める(例えば,夫が3分の2,妻が3分の1など)「合意分割制度」と,一定の要件を満たせば、合意なしに2分の1で分け合うことになる「3号分割制度」(ただし,平成20年4月1日以後の3号被保険者期間中の厚生年金記録があることが必要)があります。

これらの手続きを利用するためには,厚生年金記録が存在していることと,原則として離婚等をした日の翌日から起算して2年以内に請求する必要があります。

合意分割制度においても、現在では、双方の合意があれば、離婚後、そろって年金事務所に行き、必要書類の提出でもってすることができます。もっとも、離婚調停調書に按分割合を定めたり、按分割合を定めた判決をもらうことで妻側が単独で手続を行うことができ、実際は、この方法で行うことが大半です。そして、実務上、按分割合は、1/2と定められるのが通常です。

年金分割の対象となるのは,公的年金のうち,厚生年金と共済年金です(共済年金は,平成27年10月に厚生年金に一元化されました)。

婚姻期間中,配偶者が,ずっと国民年金だけに加入していて,厚生年金・共済年金に入っていない場合は,年金分割ができません。また,厚生年金基金,確定給付企業年金,確定拠出年金等は年金分割の対象とはなりません。

〇親権

親権とは,未成年者の子どもを監護・養育し,その財産を管理し(財産管理権),その子どもの代理人として法律行為をする権利や義務(身上監護権)のことをいいます。

離婚をする場合に,未成年の子どもがいる場合には,親権者を父・母のどちらにするかを必ず決めなければいけません。

協議離婚の場合は,話し合いにより、どちらか片方を親権者と決めます。離婚届には親権者を記載する欄があり,未成年者の子がいる場合には,親権者を記載しなければ,役所で離婚届を受け付けてもらえません。

話し合いで折り合いがつかない場合には,離婚調停を家庭裁判所に申し立てることになります。

調停が不調に終わった場合には,離婚訴訟を提起することになります。このとき,離婚の条件のひとつとして親権をどちらにするかを裁判所に判断してもらうよう申立をすれば,裁判所が判決で親権者を定めることになります。

親権者の決定は,養育費などのお金の問題とは異なり,親権を得るか失うしかないので,感情的に遺恨を残すことが多くなります。あまり子どもを可愛がっていなかった夫が,離婚の話が出た途端,突然親権を主張しだすということも多々あります。

子どもの年齢が低い場合は母親が親権者となるケースが多いですが,それだけではなく、同居中の育児を担っていたのはどちらか、収入面,他に面倒を見てくれる人(監護補助者)の有無(親・兄弟が近くにいて協力を頼めるか),住環境、子の意思など,色々な事情を総合的に考慮して決定します。15歳以上の子どもの親権を審判や訴訟で定める場合には,裁判所が子ども本人の陳述(考えや意思)を聞く必要があります。

〇監護権

先にも述べたように,監護権(身上監護権)は,親権の中に含まれている権利の一種で,その具体的な内容としては(居所指定権,懲戒権,職業許可権,身分行為の代理権)」が含まれています。

監護権は,親権の一部なので,原則として親権者がこれを行使します。ですので,親権者と監護権者は一致するのが原則ですが,親権者が子どもを監護できない事情がある場合や,親権者でない片方が監護権者として適当である場合には,親権者と監護権者が別々になることもあります。例えば,財産管理については,父親の方が適切であり,子どもが小さいので同居して面倒を見るのは母親がするのが適切だというような場合には,父親が親権者,母親が監護権者になるという方法をとることができます。

〇面会交流

面会交流権とは,子どもを監護・養育していない親(非親権者・非監護者)が,子どもと直接会ったり,電話,手紙やメールで,親子の交流をする権利のことをいいます。面会交流権は,親の権利であると同時に,子供の権利でもあるといわれています。

面会交流の頻度をどの程度にするかは,まずは当事者の話し合いによって決めることになります。しかし,親権・監護権を取得した方の親としては,子どもをもう一方の親に会わせたくないとか,縁を切りたいと思うことが多く,話し合いが決裂することも多いです。そのような場合には,調停や審判で解決を試みることになります。家庭裁判所は,当事者双方の意向を聞き,面会交流を禁止・制限すべき事情が無いかを検討します。家庭裁判所調査官による調査がなされる場合もあります。その場合には、子の意思も聴取され、特に禁止・制限するべき事情がない限り、定期的な面会が認められるのが通常です。原則として月に一回程度認められることのが通常です。

〇家の売却

離婚の際に持ち家がある場合,その家を売ってしまうのか,どちらかが住み続けるのかによって,財産分与の方法が異なってきます。そして,住宅ローンが残っているかどうかによっても,事情が異なってきます。

例えば,持ち家の査定額が1500万円,ローンの残額が1000万円の場合,持ち家の価格がローン残額を上回っていますので,家を売却してローンを返済すれば、手元に500万円の現金が残ることになりますので,財産分与の際には,500万円分の価値の財産があると考えます。

ですので,持ち家を売却した場合には,2人で250万円ずつ分けることになります。持ち家を売却した際に,購入時よりも価格が上がっている場合(売却益が出た場合)には,税金がかかりますので,売却する際にはそのあたりも気を付けて下さい。

持ち家を売らずにどちらかが住み続ける場合には,500万円の価値の財産を一方が取得することになりますので,住み続ける方が出て行く方に対して250万円を支払うことになります。この場合,不動産を取得した方は,不動産取得税が課される場合がありますので,気を付けてください。

では,次に,持ち家の査定額が1000万円,ローンの残額が1500万円ある場合には,もし家を売っても,まだ500万円のローンが残ります。

このように分け合うものが借金のみの場合は、借金を財産分与の対象にすることはできません。借金については,財産分与の対象とならず,借金の名義人(債務者)各自が,単独でそのまま責任を負うということになります。この場合,離婚したから半分にしてほしいとか,保証人から外してほしいということは,基本的にはできません。ですので,ローンの分担等についても,協議で解決できない場合は,調停,審判や裁判で解決を図ることになります。

 

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