離婚手続きの種類
離婚の手続きには、4つあります。「協議離婚」、「調停離婚」、「審判離婚」、「裁判離婚」です。それぞれのケースについて、以下で詳しく解説致します。
1.協議離婚
協議離婚とは,夫婦で合意の上,役所に離婚届を出す離婚の形式です。
協議上の離婚をする場合には,離婚について同意をしていれば足り,離婚のための理由は必要ありません。ですので,相手方との性格の不一致や,価値観の違いといった漠然とした理由でも離婚ができます。お互いが離婚届に署名・押印するだけなので(未成年の子どもがいる場合には,親権者を決めておく必要はあります),時間や費用が節約できるもっとも簡単な離婚方法です。
もっとも、協議離婚の場合には,財産分与や養育費などを決めないまま離婚してしまい,後からお金のトラブルが生じることが散見されます。また,離婚に際して,財産分与や養育費を決めていたとしても,どちらかに一方的に有利な金額(相場よりもかなり高額or低額)で決めてしまい,本来なら払う必要の無い額を支払わなければならなくなったり,貰えるはずのお金を貰えなかったりすることがありますので,慎重な判断が必要です。当事務所では,離婚相談は初回無料ですので,協議離婚をする前にも,一度弁護士に相談してみることをお勧めします。
協議離婚にあたっては,財産分与の支払方法が分割である場合や養育費の支払いがある場合には,その内容を公正証書にすることをオススメします。公正証書とは,法律の専門家である公証人が作成する公文書です。公正証書の有用性は,養育費等の定期金の支払が滞った際には、裁判を経ずに強制執行ができることにあります。
2.調停離婚
調停離婚とは,当事者の間で離婚の話し合いがつかない場合や話し合いができない場合に,家庭裁判所の調停手続を利用することを言います。離婚調停では,離婚に関するすべての事を話し合うことができます。
なお,原則として,離婚調停をしないで離婚の裁判をすることはできません(調停前置主義)。
離婚調停では,家庭裁判所で2名の調停委員を交えて,お互いの条件調整を行って,合意に至れば離婚が成立します。家庭裁判所の本庁・支部・出張所で行われます。
相手方に,協議離婚に応じてもらえない場合や,離婚すること自体は合意できていても財産分与や養育費の額等の離婚条件について争いがある場合などに,調停委員を交えた柔軟かつ公平な話し合いの場で,協議をすることができます。
基本的な調停の形式は,調停委員が夫婦それぞれ交互に30分程度,双方の意見を聞いて,条件の擦り合わせを行っていきますので,夫婦が顔を合わせることなく協議をすることが可能です(待合室も,夫婦別々に用意されます)。
調停の期間は,事案によってまちまちですが,6ヶ月~1年で解決することが多いです。調停が開かれるのは,裁判所の予定にもよりますが,およそ1ヶ月に1回程度です。
◆離婚までの流れ
- 調停の申立て
- 期日の指定・呼出し
- 調停
- 調停の成立(離婚成立)
- 離婚届の提出
◆手続きの説明
①調停の申立て
離婚調停の申立てをするには、離婚調停の申立書を家庭裁判所に提出しなければなりません。この申立書は、家庭裁判所に備え付けてあります、また裁判所のホームページからダウンロードすることもできます。
申立てに必要な費用は、収入印紙1200円分と連絡用の郵便切手です(厳密には管轄の裁判所にお問いあわせ下さい。)。
申立てに必要な書類は、申立書及びその写し1通、そして夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)です。年金分割についても求める場合は、年金分割のための情報通知書を添付しなければなりません。
この申立てをすることができるのは、当事者である夫と妻です。
②期日の指定・呼出し
調停の申立てをすると、裁判所から、調停をする日(期日)が記された手紙が届き、呼出しがあります。原則として調停は本人が行かなければならないのですが、どうしても都合がつかない場合は、期日を変更する旨の申立てをすることができます。また、弁護士が代理人として代わりに調停に出ることもできます。但し、離婚調停の成立時には必ず、本人の出頭が必要です。これは本人の意思を裁判官が確認するためです。
③調停
調停は、調停委員会(裁判官1人、調停委員2人)と当事者が各々調停室でテーブル越しに話し合う形になります。夫婦間の事は微妙な問題を含んでいますので、当事者は交代で事情を聴かれることになります(目安としては30分で交代します。)。
もっとも、裁判官は、1人でたくさんの調停を担当していますので、実際に話を聞くのは調停委員ということになります。
先ほども述べました通り、ここでは夫婦間のすべての事を話し合うことができます(例えば、子どもの親権や親権者とならない親と子との面会交流をどうするか、養育費、離婚に際しての財産分与や慰謝料、年金分割の割合など。)。
調停の日程については、裁判所の予定にもよりますが、申立てから約1カ月後に第1回目の調停が開かれ、その後も約1カ月ごとに開かれるのが通常です。
なお、調停は非公開ですので、裁判のような傍聴人はいません。
④調停の成立
夫婦が離婚に合意し、条件面が整えば、調停離婚が成立します。そして、この時点で法律的に離婚の効果が生じます。
夫婦が離婚に合意すれば、裁判所は調停調書を作成します。この調停調書には判決と同じ効力があります。例えば、調停調書に基づいて強制執行をすることができます。
⑤離婚届の提出
離婚の調停が成立した場合、原則として本籍地のある市区町村役場に調停調書の謄本を添付して離婚届を提出します。離婚は調停成立の時点で法的な効果が生じていますので、離婚届の提出は、戸籍に離婚の事実を反映させる点に意味があります。事後報告的なものと言えるでしょう。届出は、法律で、調停が成立してから10日以内にしないと過料の制裁があるため、迅速に手続きを行う必要があります。
◆調停進行の一例
- 午後1時 調停開始 申立人である妻が入室。
調停委員が,妻から話を聞く。養育費は月6万は欲しいという提案がされる。 - 午後1時半 妻が退室し,相手方である夫が入室。
調停委員が,夫から話を聞く。養育費は月4万にして欲しいという提案がされる。 - 午後2時 夫が退室し,妻が入室。
調停委員が,夫から4万円の提案がなされたことを妻に伝える。妻は4万円では納得がいかないことを伝える。 - 午後2時半 妻が退室し,夫が入室。
調停委員が,妻の主張を夫に伝える。夫は,4万円でも多いぐらいだから,絶対譲れないと言い張る。調停委員から,ボーナス月だけ増額して払うのはどうかと提案。 - 午後3時 夫が退室し,妻が入室。
妻は,月5万円+ボーナス月は更に5万円増額なら合意すると主張。
調停委員が,妻の主張を夫に伝え,とりあえず持ち帰って,よく考えるように諭し,次回の調停の日程を決めて,この日の調停は終了。
調停には,裁判のような強制力はないため,最終的に夫婦の合意がなければ離婚は成立しません。調停を申し立てても,相手方が調停の場に現れなければ,調停による解決は望めません。
調停は、当事者だけでも利用できる制度ですが、昨今では、調停段階から弁護士に依頼する人も増えています。平日の昼間,仕事があって裁判所に行けない場合や,交渉を少しでも有利に進めたい場合には,弁護士が代理人として代わりに調停に出頭したり、本人に同行して交渉をすることが可能です。
3.審判離婚
調停で協議が行われたにもかかわらず,双方の意見が折り合わない場合であっても,離婚を成立させた方が双方の為であると認められる場合には,家庭裁判所は調停委員の意見を聴いて,職権で離婚の処分ををすることができます。これを審判離婚(調停に代わる審判)といいます。離婚自体には両者合意しているものの,財産分与や養育費といった条件面が折り合わない場合に,審判がされる場合がありますが,審判となること自体が稀です。
裁判所が,職権で強制的に離婚を成立させますが,不服がある場合には異議申立てをして,審判の効果が発生しないようにできます。
4.裁判離婚
裁判離婚とは,裁判所の判決によって強制的に成立させる離婚の形態を言います。
家庭裁判所の調停,審判でも離婚成立に至らなかった場合に,どうしても離婚しようと思えば,裁判所に離婚の訴えを起こし,その裁判に勝って,離婚を認める判決を得ることになります。
裁判離婚が認められるためには,以下の「離婚原因」という離婚を認めてもらうための理由のうちいずれかが必要になります。
【離婚原因】
①配偶者に不貞な行為があった時
不貞な行為というのは、要するに浮気のことですが,法律的にいうと,配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて配偶者以外の異性と性的関係をもつことです。性的関係があったことが必要で,食事に行っただけとかデートしただけでは,原則として不貞行為とは認められません。1回限りの肉体関係の場合には,不貞行為と認められない場合もあります。
②配偶者から悪意で遺棄された時
悪意の遺棄とは,要するに配偶者のことを見捨てて顧みないことですが,法律的にいうと,民法752条で定められている、夫婦の同居義務、協力義務、扶助義務を正当な理由なく悪意で守らないことをいいます。具体的には,以下のような場合が,悪意の遺棄にあたり得ます。
- 理由無く,生活費を渡さない
- 理由無く,家に帰ってこない
- 虐待,暴力によって妻(夫)を追い出して、家に帰れないようにしている
- 愛人と別の家を借りて住んでいる
③配偶者の生死が三年以上明らかでない時
生死が明らかでない時とは,生きているか死んでいるかが分からない場合のことをいいます。
どこにいるか分からないが,生きていることは確かな場合は該当しません。また、すでに死亡している場合も該当しません。
単に居場所が分からないが,時折手紙が来る場合などは、この「生死が三年以上明らかでない時」にはあたりませんが,さきに述べた「配偶者から悪意で遺棄された時」にあたる可能性があります。
④配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない時
強度の精神病にかかり回復の見込みがない時とは,精神疾患などで改善の見込みがなく,夫婦の扶助義務が果たせないような場合をいいます。この離婚原因が認められた例は少なく,単なるアルコール中毒や薬物中毒では,この離婚原因にはあたりません。
⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由のある時
さきに述べた4つの離婚原因に当てはまらない場合であっても,離婚を継続しがたい重大な事由があると認められる場合には,裁判離婚が認められます。この規定は,法定離婚原因の中でも一番柔軟な規定であり、様々な場合に適用されます。
この離婚原因として認められやすいものは,暴力(DV),侮辱(モラルハラスメント),過度なギャンブル等による浪費などがありますが,1回だけのことでは,離婚原因としては認められにくいですが、このような事情が継続しており,反省の態度が見られないような場合は離婚原因として認められることもあります。