交通事故で労災保険を選択するメリット
交通事故でも労災保険が使える場合もある。
通勤中に交通事故に遭った場合、「通勤災害」として労災保険が適用できる場合があります。「通勤」とは、労働者が仕事をするために、住居と就業の場所の間の往復経路を逸脱・中断することなく、合理的な経路及び方法で往復する行為をいいます。
通勤のための往復経路を外れて行動した場合であっても、日常生活必要な行為であれば、通勤中と認められる場合もあります。例えば、帰宅途中のスーパーマーケットで夕食の惣菜を購入したり、病院で診察を受けたり、美容院に立ち寄ったりする場合であれば、通勤中と認められる場合もあります。
自賠責保険と労災保険の併用は、可能か。
自賠責保険は、国土交通省、労災は厚生労働省の所管であり、両方とも国が支払うものなので、原則として併用はできません。
交通事故では、労災保険が適用できる場合であっても、一般的に自賠責保険の方を優先して適用する実務上の慣行がありますが、後述するように、労災保険の適用を受けたほうが有利な点が多いので、病院での治療は、最初から労災保険の適用を受けたほうが良いです。
最初に自賠責保険を選択していた場合、途中から労災保険に切り替えることもできなくは無いですが、ある程度治療が進んだ段階だと、手続きが煩雑になり、病院から切り替えを拒否されることもあります。ですので、切り替えるにしても早い方が良いです。
中小企業の場合、労災保険を使おうとすると、次年度以降の保険料が上がるからやめてくれと言われる場合もありますが、これは全くの誤解です。通勤災害で労災保険を使用しても労災保険料は上がりません。保険料が上がるのは、業務災害の場合の一定規模以上の事業者のみです。一般の事業では、100人以上の労働者を使用する企業や、20人以上100人以上未満の労働者を使用し、災害度係数という値が0.4以上の企業や、一定の要件を満たす建設業がこれに該当します。
ですので、通勤災害にあたる交通事故なら、労災保険を使っても保険料は上がらないので、勤務先に迷惑を掛けることはありません。
労災保険を選択するメリット
被害者(こちら)側の過失割合が大きい(7割~)場合、自賠責保険では補償額が減額されますが、労災保険では、原則として減額はありません。
自賠責保険では、治療費、慰謝料等について限度額(傷害の場合120万円まで)がありますが、労災保険では、療養に関わる費用全額が支給されます。
休業補償については、自賠責保険は、原則1日あたり5,700円(これを超えることが明らかな場合は、19,000円を限度として、その額)で、さきにも述べた治療費、慰謝料等を全て合算して120万円までという限度額という制限があります。これに対して、労災保険では、治癒するまで無制限に8割の休業損害が補償されます。
労災保険と自賠責保険のメリット比較
|
労災保険 |
自賠責保険 |
重過失減額 |
なし |
あり |
治療関連費の限度額 |
なし |
120万円まで(慰謝料等も含めて) |
休業損害 |
8割補償(上限なし) |
原則1日5,700円(慰謝料等も含めて上限120万円まで) |