交通事故事例 むちうちの場合
むちうちでも後遺障害になりえます
むちうちの場合、主に「外傷性頚部症候群」、「頚部捻挫」、「頚部挫傷」という診断がなされます。
治療したにも関わらず、むちうちの症状が残った場合、後遺障害14級、もしくは12級に認定される可能性がありますが、症状があるにも関わらず非該当とされる場合もあります。
症状があるにも関わらず、主治医への症状の伝え方や保険会社との交渉の仕方が悪かったために、後遺障害認定を得られず泣き寝入りにならないよう、早い段階で弁護士に相談して下さい。
むちうちとは、車の追突の際の衝撃などが原因で、頚部・背中・肩・腕や肢に痛みや痺れをもたらすものの総称で、正式には、頚部捻挫、頚部挫傷、外傷性頚部症候群といった診断名が付けられる場合が多いです。むちうちに伴って、頭痛・吐気・めまい・耳鳴り等の、いわゆるバレーリュー型の症状が生じることもあります。
むちうちは、事故直後には、強い痛みを感じないこともあります。事故後かなり時間が経ってから痛みだした場合や、低速の衝突の場合には、交通事故が原因ではないと判断されてしまい、後遺症認定や傷害慰謝料が認められず、泣き寝入りとなってしまう可能性もあります。
むちうちの後遺障害慰謝料相場
後遺障害の認定を受けた場合でも、支払われる後遺障害慰謝料は、自賠責保険基準と弁護士が交渉に入った場合(=裁判所基準)とでは、以下のように金額に大きな違いが生じ得ます。自賠責保険基準と裁判所基準については、こちらに詳しく記載しています。
等級 |
症状 |
自賠責基準 |
裁判所基準 |
14級9号 |
局部に神経症状を残すもの |
32万円 |
110万円 |
12級13号 |
局部に頑固な神経症状を残すもの |
93万円 |
290万円 |
事例
乗用車で交差点での信号待ち停車中、後方から衝突され、頚部捻挫、腰部捻挫の診断。通院期間は約6ヶ月(実通院日数72日)で後遺障害14級9号が認定された30代女性(主婦)の例。
任意保険提示額 |
裁判所基準 |
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治療費 |
約68万円 |
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約68万円 |
通院交通費 |
約5万円 |
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約5万円 |
通院慰謝料 |
約60万円 | → 29万円アップ |
約89万円 |
後遺障害慰謝料 |
約32万円 | → 78万円アップ |
約110万円 |
後遺障害逸失利益 |
約43万円 | → 40万円アップ |
約83万円 |
休業損害 |
約41万円 | → 29万円アップ |
約70万円 |
合計 |
約249万円 | → 計176万円アップ |
約425万円 |
むちうちの後遺症認定の基準
一般的なむちうちの後遺症認定では、第12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」と第14級9号「局部に神経症状を残すもの」の認定がなされる可能性があります。
12級にあたるためには、MRIなど他角的所見によって、障害が医学的に証明されることが必要です。
14級の場合には、MRIなど客観的な医学的所見がなくても認定されることがありますが、受傷状況や治療の経過などからみて神経系統の障害が医学的に説明可能なことが必要です。14級に該当する程度のむちうちは、MRIなどで異常が確認されることが少ないため、心因的なものと疑われることも多く、認定においてトラブルが多いタイプの後遺障害といえます。
低速度の衝突が原因で「むちうち」になりうるか?
結論から言えば、日本損害保険協会委託調査の結果によると、かなり低速度であっても、むちうちになりうるという実験結果が出ています。それでは、裁判においてはどういった判断がなされているか、否定例と肯定例を見てみましょう。
判例1 <否定例>最高裁判決 昭和62年10月30日のケース
被害者の普通乗用車が国道上のゆるい下り坂で停止していたところ、その後方7~8メートルに1台のの軽トラックが停止した。軽トラックの運転手のミスでブレーキがゆるみ、時速約5キロメートルの速度で被害者乗用車後部に追突した。
本件では、鑑定人の鑑定結果や症状を裏付ける他角的所見が無いことを理由に、交通事故がむちうちの原因になったことを否定した。
判例2 <肯定例>東京地裁判決 平成9年9月18日のケース
本判決は、判決1と同様の時速約5~10キロメートルの追突事故であるが、被害者が追突時に首を右にひねった体制であったことや、症状悪化の経過が合理的に説明できることから、交通事故がむちうちの原因になったことを肯定した。
泣き寝入りにならないために
低速度での衝突や車体の損傷が少ない場合、保険会社は、受傷と交通事故との因果関係を認めず、治療費や慰謝料の支払いを拒むことがあります。俗に閾値(いきち)論と言われますが、保険会社は、時速15キロ以下の衝突の場合には、受傷と交通事故との因果関係を否定することが多いと言われています。
しかし、上の記事でも見て頂いたように、実際は、時速5~10キロ程度の衝突でも、受傷と交通事故との因果関係が認められています。特に、近年は、低速度での衝突でも状況によっては、むちうちになりうることが実験で証明されており、一昔前よりは認定を受けられるケースが増えています。
ですので、むちうちの症状に苦しんでいるにも関わらず、低速度での衝突であったために、保険会社が因果関係を否定してきた場合でも、泣き寝入りになってはいけません。適正な治療費や慰謝料を貰って、安心して治療に専念できるよう、早い段階で弁護士に相談してみて下さい。
皆様の権利は、我々弁護士が全力で守ります。