自動車運転処罰法について
2014年7月14日執筆
昨日、北海道の小樽市で、酒に酔った上で、運転中に携帯電話を操作し、女性3人が死亡、1人が重傷を負ったという交通事故がありました。
3人が死亡し1人が重傷を負うという生じた結果も重大ですが、飲酒の上、運転中に携帯電話を操作するという事故態様についても、極めて悪質な事案だと思います。
自動車事故に関しては、古くは刑法の業務上過失致死傷罪で処罰されていたものを、交通事故の厳罰化の要請から、平成13年に危険運転致死傷罪が新設されて一定の悪質な事案を重く処罰する一方、平成19年には自動車運転過失致死傷罪が新設され、交通事故全体の厳罰化が図られました。
しかし、特に危険運転致死傷罪の適用が困難で、悪質なケースでも危険運転として立件できないケースが多かったという事情を背景に、自動車運転処罰法が新設され、去る5月26日から施行されています。
この自動車運転処罰法の最も大きなポイントは、「危険運転」の適用範囲を拡大したことです。
従来の危険運転致死傷罪は、例えば飲酒運転の場合、「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる」場合に適用されることとなっていましたが、アルコールを摂取していたとしても、「正常な運転が困難な状態」と言えなければ、適用されませんでした。
しかし、今回の法改正によって、アルコールの点に関して言えば、「アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転」した場合にも、「危険運転」として処罰されることとなりました。
従来、正常な運転が「困難な状態」であることが必要であったものが、正常な運転に「支障が生じるおそれ」という要件に緩和されています。
「おそれ」というのは、その可能性があれば足りる、ということです。
通常、アルコールを体に保有している状態であれば、正常な運転に「支障を生じるおそれ」はあると言えるので、飲酒運転での事故は、基本的に「危険運転」として重く処罰されることになります。
また、法改正のもう一つのポイントは、事故を起こした者が、飲酒運転等の発覚を免れるために、①その場を離れてアルコール濃度を減少させたり、②事故後に酒を飲んで、事故当時飲酒していたことを発覚しずらくさせたりした場合、刑を加重する規定が新設されました。
冒頭の小樽市の事故、自動車運転処罰法の施行後であるにもかかわらず、発生してしまったわけですが、重く処罰されるから、ということではなしに、自動車の運転が危険であるということをすべての運転者が理解し、二度と痛ましい事故が発生しないようになってほしいと思います。