腰部の神経症状の慰謝料相場
腰の神経症状について
腰の神経症状は、主に腰椎捻挫です。腰椎も脊髄、神経根などで構成されていますので、これらの圧迫・損傷により、腰部や腰部の痛みや足の指にかけて痺れ感等の、首に生じるむち打ち症とほぼ同様の異常が発生することがあります。検査内容はむち打ち症とほぼ同様の内容のものとなり、治療内容もほぼ同様です。
【参考】
頚部(首)の神経症状の慰謝料相場
神経症状による後遺障害等級と慰謝料基準
神経症状での後遺障害等級は、12級13号と14級9号があります。各後遺障害慰謝料の基準は、以下の表の通りです。
被害者が後遺障害14級9号と認定された場合、自賠責保険から「後遺障害慰謝料:32万円」及び「遺失利益:上限43万円」が支払われます。下の表は、このうちの後遺障害慰謝料の金額について比較しています。
等級 |
症状 |
自賠責基準 |
裁判所基準 |
14級9号 |
局部に神経症状を残すもの |
32万円 |
110万円 |
12級13号 |
局部に頑固な神経症状を残すもの |
93万円 |
290万円 |
自賠責基準とは、自動車損害賠償保障法に基づく自賠責保険金の支払額による基準です。自賠責保険は、自動車(バイクを含む)の運転に際し加入が義務づけられている強制保険であり、人身事故を対象として(物損事故は対象外)、交通事故の被害者に対し最低限の損害賠償を保障する制度です。最低限の損害賠償の保障にすぎませんので、損害の賠償として十分な金額ではありません。保険会社は自賠責基準に近い水準で賠償額を提示することが多いです。裁判所基準は「裁判を起こした場合に決着するであろう示談金の金額」です。弁護士が代理人となった場合、裁判所基準を前提として交渉します。
任意保険会社は自己負担0円を目指す
何故、保険会社は、自賠責基準に近い水準で賠償額を提示することが多いのでしょうか?それは、被害者が後遺障害14級9号と認定された場合、自賠責保険からは「慰謝料:32万円」及び「遺失利益:上限43万円」の合計最大75万円が支払われるからです。従って任意保険会社は自己負担額を0円にするべく、示談金として75万円を提示することが多いのです。より詳しく解説すると以下の通りです。
事前認定(=加害者が加入している任意保険会社経由で行われる後遺障害認定申請)の場合には、自賠責保険から被害者に後遺障害慰謝料等は支払われません。任意保険会社が被害者に示談金支払いをして、その後、同社が自賠責保険会社に請求します。この場合、任意保険会社は、自己負担額を0円にするため、被害者に後遺障害分の示談金として、75万円を提示することが多いです。
他方、被害者請求(=被害者自ら後遺障害認定の手続きを行うこと)の場合は、被害者に75万円が直接支払われます。その後、被害者が任意保険会社に後遺障害損害を請求するのですが、この場合、任意保険会社は後遺障害損害を75万円と算定した上で、自賠責保険から全額支払われているので、同社からの支払いを0円と提示したりします。
14級9号と12級13号の違い
両者の違いは、14級9号が事故による症状として説明可能かどうかであり、12級13号が証明可能かどうかです。
14級9号は、事故の状況、診療経過からわかる症状に連続性・一貫性があり、事故による症状として事故の態様などから説明でき、医学的に推定が可能であればよいのに対して、12級13号は自覚症状が他覚的所見(MRI検査等や画像所見によって外部から認識できること)によって事故を原因とするものであることが医学的に証明できなければなりません。MRI検査等の結果が、12級と14級を分けることになります。
後遺症非該当と14級の分かれ目
では、「後遺症非該当」と「14級」の分かれ目はどこにあるのでしょうか?両者とも他覚的所見がないことは同じです。そのため、症状の連続性・一貫性の有無により判断されます。
通院日数が少なかったり、通院期間が短かったりすると症状が軽微であると判断され、実際に、14級相当の後遺障害があったとしても非該当となってしまう恐れがあります。また、14級と認定されるには事故直後から症状固定までの症状の一貫性・連続性が必要となります。医師の作成するカルテの資料に症状が記載されていない場合には、診断の時点で、その症状がなかったと判断される恐れがあります。診察時点での症状は、症状の全てをなるべく具体的に医師に伝えて、カルテに記載してもらうようにする必要があります。
神経症状の場合には、後遺障害認定で不利にならないように、その後の通院や診察の際の対応について、事故直後から弁護士に相談することも有用です。